2015年4月8日水曜日

翻訳スタッフより(3)

翻訳スタッフからのコメント紹介、最終回はzig5z7さんです。笑美ルートの査読からの参加ですが、岩魚子の手紙CGのブラッシュアップ等、テクニカルな部分でも大いに貢献していただきました。



zig5z7です。
主な担当部分は、日本語話者側からの査読(笑美ルートの一部)と、校正や動作確認(Mac、Linux)です。

翻訳チームに参加しようと思った動機は、こんなにも長く続いているこの変な祭りに乗っかりたい、それだけです。
英語完全版のリリースが2012年1月、最初の体験版が完成したのは2009年4月、原案となったRAITA氏のイラストが発表されたのは実に2000年12月とのことです。そして2015年Q1現在でも公式フォーラムを始めとする数多くのサイトに質問/感想/プレイ動画/二次創作が投稿され続けていることでもわかる通り、とても長く広く深く愛されている作品です。
4LSの皆さんをはじめ今までこの作品に関わった全ての人と、これから関わる全ての人に感謝します。

日本語版スクリプトの行数をざっくり数えてみたところ、Act 1(体験版との共通部分)が約5000行、Act 2以降は少ないキャラでも4000行、多いキャラでは5500行を越えます。この数字は日本語部分の論理行だけを数えたもので、表示上の改行やプログラムとしての制御部分を含んでいません。
この巨大なサイズにもかかわらず、世界で一番早く公式日本語版をプレイした内の1人としての感想は「珠玉混淆」です。「玉石」ではなく、つまり捨てパートがありません。ルートごと/エンドごとのカラーに違いこそあれ、いずれ劣らぬ名ルートで、あとは単純に好みや願望の問題だと思います。……とも言い切れないルートが1つあることを思い出しましたが、そこには言及するまでもないでしょう。あの終わり方が一番好きだという人はいないはず、と思いたい。あれはこのゲームの目的じゃないし。

翻訳という作業について、開発チームのSilentcook氏による文章が以下にあります。
「Traduttore = traditore」
http://katawashoujo-ja.blogspot.jp/2010/10/traduttore-traditore.html

また、エロシーンやいわゆる障害についての開発者側の考え方は、例えば以下にあります。

「もっとずっと良いものになるのに」
http://katawashoujo-ja.blogspot.jp/2011/02/blog-post_28.html

「Kotakuオーストラリアのレビュー記事翻訳」
http://katawashoujo-ja.blogspot.jp/2012/01/kotaku.html

これらの点については開発者ブログでは他にも何回か書かれていますし、自分が今更そこに何かを付け加える必要を感じません。
敢えて個人的なことを強いて言うとすれば、祖父が硫黄島帰りのリアルびっこ傷痍軍人だったこともあり、いわゆる差別用語のうち身体的特徴に関する語については単に状態を表す語として捉える以外の感覚/感情を特段抱かず育ちました。それ以上の感覚/感情については、クリシェどおり「かたわ言うもんがかたわなんじゃ」という感じです。

ただの絵炉や具露に興味がある人間がやるゲームじゃありません。
ここを見てる人の中に、タイトルで引いた人、必ずしも抜くことを目的とはしていないエロゲをやりたい人、いわゆる健常者、いわゆる障害者、がいたら、まずは1回このゲームをプレイしてみてからいろいろ考えなさい。以上!(といってもリリーがこのゲームをプレイするにはシステム上それなりの困難が伴うはずですが、きっと久夫が読んでくれるでしょう。)

2015年4月7日火曜日

翻訳スタッフより(2)

昨日に引き続き、翻訳スタッフからのコメントをご紹介します。プロジェクト後半からの参加でしたが、作業の速さと綿密な翻訳レビューで品質向上に貢献していただいた秋茄子トマトさんです。



秋茄子トマトです。
翻訳者コメントということで、自分なりにこの翻訳プロジェクトを振り返ってみたいと思います。

人生何が起こるかわからないし、明日死ぬ可能性だってあるので、何か(名前とか存在証明とか)を残したいな~という気持ちが最近ちょっと出てきて(昔は全然なかったんだけども)、実は、それがこのプロジェクトに応募した理由の一番大きなものかもしれません(単純に、面白そう楽しそう、などの理由も、もちろんあります!)。
「かたわ少女」は、フリーゲームの歴史に名前を残すゲームだと思うし、ということは、十年や二十年程度は絶対に残る作品だと思うのですよ。
そこに翻訳者として名前が載れば……仮に明日死んでしまったとしても、確かに自分はここにいた、という証をある程度の期間、残せるんじゃないかと思ったのです。
もちろん、これからの時の流れの中で、このゲームも忘れ去られるときがくるだろうけれども……自分はこのときちゃんと生きていたよ、という印を残しておきたかった。
そういう個人的な思いもあって、この翻訳に参加したんですが、ぼくは、確かグループの中では最後に入ったメンバーだったんじゃなかったかな。
多人数で翻訳するのは初めてだったので、いろいろ新鮮でした。

担当箇所や作業手順について。
「図書室」を選択したあとに、章の上にカーソルを当てると下のほうに見える説明……いわゆるサブタイトルの説明、の翻訳。それから、各ルートのレビューと動作チェックをやってましたね。
ぼくが入った時点では、英文から日本語への翻訳がおおむね終わっていたのですが、そのままだと誤訳などもあるので、原語と対応させて何重かのチェックをかけて修正を入れたりするわけです。そこで、原文と照らし合わせて、誤訳や言い回しなどをチェックしていく作業(レビュー)をします。
リリー、華子、笑美ルートが、レビューをたくさんしたところでしょうか。これらのルートはけっこう自分の訳や解釈も入っている印象があります。
動作チェックは、日本語でゲームをプレイして、おかしなところを直していくというもので、日本語として違和感を感じる表現を直していく作業です。たまに原文にも当たることがありました。
レビューと動作チェックにはけっこう貢献できたのではないかと思ってますが……どうだろう。

こういう手順でやってたわけですが、読んでわかるとおり、一人の人間がルート一本まるまる翻訳担当する、っていう形じゃあないんですよね。
多人数でやるんだからダブルチェック、トリプルチェックかけるのは当然といえば当然なわけですが……。
もちろん、ゲームの規模が大きいというのもあると思いますが、そういう風に翻訳をしているとは知らなかったので、「おお~!」と感嘆。
ここまでの規模のゲームだと、翻訳もかなりの共同作業になるんだなあ、と思いました。
自分の前の人の翻訳や、その修正なども見れるので、他の人の作業過程がわかり、非常に面白かったです。
「なるほど、この訳はいいな」とか「自分にはこの表現は出せない」とか「あ、誤訳だ」とか「英文の解釈が違うんじゃないか……?」とか。
そういう色々なことを考えられるのも、楽しかったですね。やっぱり訳者によって「くせ」や「色」があるのも見えて、興味深かったです。
非常に楽しかったし、いい経験にもなったと思います。

印象に残っていることは、レビューのときに見た、"She's limping slightly, favoring the left leg."という笑美ルートの表現ですかね。
「右足をけがしているので、左足で歩いている」という箇所なんですが、訳す時にどういう意味か混乱したので印象に残っています。「favoring the left leg」について、左足をかばっているっていう意味で、けがしたのは左足なんじゃないか、という解釈と、右足を痛めていて左足を優先的に使っているという解釈のどっちが正しいのか、結局、原作側に聞くことに。翻訳された小説などを読むと、原作者とのやり取りについて書かれたものに出会うことがありますが、「これがそうか……!」とちょっと感動。

翻訳しているうちに、キャラにもルートにも愛着がわいてきます。たとえば、英語で読んだときはそれほどでもなかったけれど、日本語で読んで、華子に対する愛着が増えた感じがします。静音ルートは、岩魚子の手紙についての健二のセリフがかっこよく、かなりサブキャラが目立っているルートだと思います。琳はキャラクターがホント好きです。このルートでは久夫の気持ちより琳の気持ちがわかる気がしたくらい。
どのルートもよいのですが、触れ合った時間が長いためか、あえて言うなら、笑美とリリーに、特に愛着があるかも。リリーのレストランでの服装を考えた人には拍手を送りたいし、笑美に似た人を実際に知っています。ストーリーも好みでした。
そして、岩名子ルートとミーシャルートがなかったのはつらい……RAITA氏の原案的にしょうがないけど、とくに岩魚子ルートは欲しかったですね。どんな人だったのか、もっと知りたいキャラです。変則エンド扱いでいいから、復縁ルートが欲しかったなあ。

最後に、プレイヤーの皆さんが、この日本語訳版かたわ少女を楽しんでいただければ、翻訳プロジェクトに少しでも関わったものとしては、大変うれしいです。
原作の4 Leaf Studioの方々にも、翻訳プロジェクトに参加したすべての方にも、そしてプレイヤーの皆さんにも、多大な感謝を。ありがとうございました。

2015年4月6日月曜日

翻訳スタッフより(1)

かたわ少女日本語版の公開から、大変多くの反響をいただいており、非常に驚いています。
私たち翻訳スタッフも非常に感慨深い思いです。

公開を祝して、翻訳スタッフからのコメントをいくつかご紹介したいと思います。1番手は体験版(Act1)以来翻訳チームに参加されていた古株のゴン太さんです。




「かたわ少女」日本語版完成に寄せて

どうもこんにちは。
今回日本語化プロジェクトに参加させていただきました、ゴン太と申します。

きっかけは、とあるサイトでこのゲームの存在を知り、これがMacにも対応しているという事を知り、「もっと多くのMacユーザーにこのゲームをプレイしてほしい!」と思い、第1章体験版からこの日本語化プロジェクトに参加することになりました。
僕が担当したのは、笑美ルートの翻訳の一部と、最後の動作チェックですね。後者は主にMacでの動作確認を中心に見てました。
今回のプロジェクト参加で、自分の英語力の無さを痛感する一方で、本業の方が忙しくなったので他のメンバーの皆さんに助けていただいたり、プロジェクトメンバーの皆様には多大なご迷惑をかけた事をお詫びするとともに、本当に心から感謝しております。ありがとうございました。
個人的に気に入ってるのは、翻訳を行った笑美ルートと、チェックの際にプレイした華子ルートですね。
ここだけの話なんですが、実は翻訳にあたっては、翻訳サイトや辞書サイトのお世話になった事も記しておきます(笑)。

今回の日本語化プロジェクトを通して、改めて自分自身と向き合う事が出来ました。
途中でこのプロジェクトから離れようとも考えた事もありましたが、関わっていくうちに「自分がこれまで生きてきた証を、最後のスタッフロールという形で残しておきたい」と思うようになり、最後の方で動作チェックという形で再び復帰するということになりました。
完成版登場から約3年という難産ではありましたが、このような形で日本語版を世に送り出せることを嬉しく思います。

最後になりましたが、このような素晴らしいゲームを世に送り出して下さった4Leaf Studioのスタッフの皆様方、日本語化プロジェクトチームの皆様、そして…このゲームを手にとってプレイして下さった皆様に、心からお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

2015年4月1日水曜日

かたわ少女日本語版(V1.3J)リリース


 イラスト:weee

かたわ少女1.3J(日本語対応版)を公開しました! オリジナル版のリリースから3年、「かたわ少女プロジェクト」の起源となった言語で遊べるようになりました。プロジェクト完遂に際して、翻訳チームの皆さんにお礼とお祝いを述べたいと思います。新しい言語でお届けするこの物語をお楽しみいただければと思います。

こちらのリンクからダウンロードをお願いします。

※このゲームは成人向けの内容を含みます。18歳未満の方はダウンロード・プレイすることはできません。

Torrent: Windows | Mac OS X | Linux
直接ダウンロード: Windows | Mac OS X | Linux

これまでと同様、torrentをシードしていただけると大変助かります。1.3Jは従来のバージョンを完全に置き換えるものです。新規にプレイをされる方はこちらをご利用下さい。

既にお知らせした通り、来る5月5日のコミティア112に「かたわ少女日本語訳プロジェクト」として参加します。スペース番号は「こ29a」になります。かたわ少女日本語版のパッケージ版を頒布する予定です。上でご紹介したweeeさんの描き下ろしイラストが目印です。どうぞお越し下さい。

- Aura




おことわり

こちらで公開した日本向けバージョンでは、法律に従うため一部CGで性器描写の修正が行われています。
日本語訳リリースにあたりCGの修正を打診いたしましたが、開発側の意向により、日本向けバージョンのみCGを修正済みのものに差し替えるという対応を行っています。
公式サイトで公開されているバージョンには翻訳チームは関与しておりませんので、あらかじめご了承下さい。




翻訳チームより
 
大変長らくお待たせいたしました。かたわ少女の日本語訳がようやく完了し、皆様にお届けできる運びとなりました。
英語版のリリースから3年3ヶ月、辛抱強くお待ちいただいた皆様に深くお礼を申し上げます。翻訳チームにとっても非常に長い道のりでした。多くの困難を越えて、無事翻訳を終えてリリースできたことを嬉しく思います。

かたわ少女の翻訳およびリリースは、Four Leaf Studios開発チーム・翻訳チームのメンバー各位を初めとする様々な方々の協力なしにはなしえませんでした。 この場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

「かたわ少女」は日本の外にある人々が、我々日本人になじみ深いビジュアルノベルという形式の作品を英語で作り上げた、画期的な作品です。またタイトルの印象に反して、内容はとても真摯な物語であり、リリース直後から海外で多くの賞賛を得ました。間違いなくゲーム史上、記憶にとどめられるべき作品、あるいは現象であると考えています。
(一例として、Youtubeを"Katawa Shoujo"で検索すると動画が約63800件ヒットします。)

何より自分自身も、プレイして心を動かされたと言うことが、日本の人々にも広く知ってもらいたいと思った理由であり、翻訳をしようと思ったきっかけでもあります。

日本のオタク文化が海外へ広まり、その結果として作られた作品がこうして日本に戻ってくるというのは一種の大団円と言えると思います。幸いにもその一端を担うことができました。

ある意味ではこの翻訳を完遂して世に送り出すことが、自分の使命だと感じていました。その思いがあったからこそ最後まで続けることができたように思います。

翻訳については至らぬ点があるかもしれませんが、違和感なく日本語として鑑賞できるよう最善を尽くしたつもりでおります。お楽しみいただければ幸いです。

2008年の体験版リリースから7年、2012年の完全版から3年。当時は英語のビジュアルノベルは今以上にニッチな存在でしたが、ここ1年ほどでSteamなどを通じて配信される作品が増えてきています。

今般のリリースをきっかけに、海外のノベルゲーム等の作品に関心を抱く方、実際にゲームの和訳に関心を持つ方が増えると嬉しく思います。