2010年4月22日木曜日

熱狂的ファン

今となってはよくあることだが、私はゲームの人気だけでなく、思わぬ反響にいつも驚かされている。とりわけファンたちに、だ。ファンというのは素晴らしく、恐ろしく、そして奇妙だ。ファンたちは語ることが大好きで、物事を深く考察する。ファンのあるところ憶測があり、そしてまだAct1しか元ネタがないというのに、人々はストーリーやキャラクターを本当に深く読んでいる。一方で、キャラクターは深みのない類型にはまってしまいがちだ。琳は気まぐれで、笑美は子供っぽくて、華子は引っ込み思案で、リリーは上品、等々。最初はその事で私は落ち込みもした。こんなに単純なキャラを作ってしまった自分たちはどうしようもなくヘタクソだったんじゃないか、と思った。ただその後で、Act1に含まれていないストーリーや動機付け、その他諸々のことが、キャラに大いに深みを与えているんだ、と言うことに気がついた。というわけで、私、そしてファンたちがキャラクターたちをどう考えているかについて考えてみた。(ファンについては平均的な話をするけど……でもファンのことを一般化しすぎることはしたくない。ファンの皆さんにもキャラクターについて一般化して欲しくはないし。)


笑美と琳

笑美は琳の召使いではないし、琳だって召使いを必要としているわけではない。(現実の)先天的に腕のない人が、その足やつま先でできることを知ったら、あなたはきっと驚くだろう。服を着る、服を脱ぐ、トイレまわり、学校生活、食事(箸よりはフォークやスプーンの方が都合がいい)、等々……琳はこうしたことを、手助けなしで完璧にこなせるのだ。琳にできない、あるいは難しすぎることというのはどんなことなのか、必死に考えたことがある。確かに笑美はいろいろと琳を手伝っているけど、それは琳がそうした手助けを必要としているからではない。笑美がそういう世話をするのが好きなのだ。母性本能かも? 笑美は母親っぽいと言うより子供っぽいと見られがちだが、少し考えてみれば、笑美は年齢の割にはとてもまじめで責任感のある人物だ。

周りの人間に現実離れした反応を返すという最大の特徴のおかげで、琳は類型化の弊害を大いに受けている。私もこれは面白いと思うけど、琳をコミックリリーフのようにしたくはなかった。ただ、以前の琳はもっと気まぐれなキャラクターだった。彼女をもっと多面的なキャラにするよう、がんばって努力するつもりだ。


静音、ミーシャ、久夫

ミーシャは静音にとって唯一の、手話を知らない人々とのコネクションというわけではない。自分の母国語しか話せない人がいるように、聾唖者が必ず識字能力を持つとは限らないが、静音は読み書きができる。なので、久夫が手話を学ばなかったとしても、『プライベートな場』(あるいはあらゆる状況で)ミーシャがいないといけない、と考えるのはちょっと馬鹿げている。

読者の静音の態度や行動への反応は、私がリリース前に非常に不安に思っていたそのものだった。静音をAct1における中心的なキャラクターに設定して(A22は不満だったが)、むしろ悪役に近い立ち位置にまでしたのは私だ。(A22はさらに不満だったが、それでも真面目にシナリオを書いてくれた)いくつかのシーンでは議論も呼びそうなほどの強気な性格に、読者がしらけてしまう危険はあった。幸いそうなることはなかった。静音は人気の高いキャラクターになったようだし、多くのファンは彼女を本当に『つかんで』いる。


華子

華子の障害は本当に一つだけだろうか? 彼女は本当に山久学園に『属して』いるのだろうか? 彼女のようなひどい火傷はいつまでも残るものだが、山久学園が病院ではないということは忘れてはいけない。障害のない子供もここには通えるのだし、人混みの中で目立ってしまわないような環境にいた方が華子にとっておそらく具合がいいだろう。華子は静音とならんで、私たちが『うまくやった』と感じられるキャラクターで、読者からの反応はまさに予想・期待通りのものだった。


あらあら、うふふ

ははは、やれやれ。リリーか。ごく初期のシナリオでは、彼女はステレオタイプそのままのキャラクターだった。上品で、教養のあるほとんど完璧な天使のようなお嬢様。彼女が典型的なメアリー・スーであったことに気づいて、恐れおののいたSurikoはそのイメージからリリーを引き離そうと奮闘している。


ミーシャの障害

何か秘密をバラすと思ったんだろう? 悪いけどそれはない。私はただ彼女の障害についての、全くとんでもない推測をちょっと評価してあげたいと思ったんだ。みんなはライターがシナリオ中に何気なく書いた描写とか、通常の振る舞いから、とんでもなく複雑な仮説を立ててくる。すごいね。きっとみんなは本当のヒントを見逃してるんじゃないか……

何気ない描写といえば、そのいくつかは私たちが予想もしない方向で人気を得た。華子の床のタイル遊びもそうだ。これは多くの人々に共鳴したようだが、実をいうと、あれは適当に放り込んだだけだった。何故こんなに人気なんだ? 他に適当に盛り込まれたものとしては、廊下の背景にある絵画で、ちょっとしたミームになっている。教室のCGのカメオ出演者もそうだ。ああなんてことだ、みんながこんなにこだわるなんて思ってなかったんだよ。カメオ出演を今まで見たことがないのかって感じだ。どこかで見たようなキャラかなにかを見つけてニヤリとするくらいは、と思ってたけど、これはない。マジでない。


Four Leaf Studios:

私たちは薄情なろくでなしではなくて、実際KSのファンたちのことは大いに気に掛けている。というか、気にしないわけがないじゃないか? こんなにたくさんの人たちが、私たちの作り上げたものを体験して、それについて語り、そして考えてくれているのは嬉しいことだ。ただ、仮に開発者総勢20名しか気に掛けていなかったとしても、私たちはこのゲームを作り続けているだろう。私たちはKSを作るとき、常にその思いを持ち続けている。

-Aura

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