2010年8月29日日曜日

若きClimaticの悩み

Act 1のリリース以後、私たちはKSに新しい種類のビジュアルを追加した。「カットインCG」と呼ばれるものだ。これは簡単に言うと立ち絵と一枚絵の中間にあるもので、完全な一枚のCGではないが、背景プラス立ち絵というシステムの範疇にもないものだ。絵描き達はこういう小さくてはっきりした絵を描くのを楽しんでいる。それと、スクリプト中に何か関心を引くような物体が指定されていたり、「二人の人物が話し合っている」以外の状況が起きたときに、その辺に適当に挿入するのに便利だったりする。

しかし、こうした小さくて味のある絵にはマイナス面もある。単にカットインCGにできるからといって、それを必ず描かなくてはいけないわけじゃない。時には、カットインCGがスクリプトやディレクションと噛み合わなくなることもある。時には蛇足に過ぎることもある。そして……その絵を描くこと自体が、予想を超えた難行になることもありうる。絵描きにとってはいい息抜きになるはずだったのに、まさに正反対の結果になってしまうのだ。そんな例として、ある日SurikoがclimaticにカットインCGを依頼したときの悲惨な物語をお送りする。華子がリリー相手にチェスを指す一場面の中で、deltaがスクリプトに「チェス盤の絵があるといいかも」と注を入れていたので、Surikoはclimaticにそのように伝えた。

「二人が使っているチェス盤には、一つ一つのマスの中央に穴が空いていることに気付く。駒の底にはピンが立っていて、黒いマスは少し高さがつけられている。」

これはゲームのスクリプト中にある説明だ。山久学園なら見かけるであろう、目の見えない人にもプレイしやすいようになっているチェス盤だ。Climaticは「ああわかった、じゃあ描く」と、この一年でもっとも後悔することになる答えを返して作業にかかる。これは見た目よりも簡単ではない作業だということが明らかになった。というか、実際にはとてもややこしいことが判明した。climatic自身の水準を満たすチェス盤を描くのに必要な労力は「巨大」か、あるいは「途方もない」とさえ言えた。まず、climaticはチェス盤を手早く3Dでモデリングした。彼が描き始めた角度では、高くなっているマスを描くのが難しいためだ。

<climatic> asdfasdga
<climatic> agfakfhgadrgra

ところが色塗りの段階に入ると、高くなっているマスの一つ一つを結局個別に塗らなくてはいけないのだった。モデルを作ったことが役に立ったといっても、これは耐え難いほどに細かく、疲れる作業だった。

<climatic> あああああああ

チェス盤が完成した後は、駒のセットが必要だ。12種類の異なる駒を32個、それぞれ個別に描かなくてはいけない。そして今度は、一つ一つの駒と、高くなっているマスも(それぞれ個別に)光源処理をしなくてはいけないのだった。それと影付けも。そう、個別に。

<climatic> 終わりがみえねー
<climatic> このクソCG
<climatic> askdjkj

合計すると、このチェス盤を完成させるのにほぼ3ヶ月かかった。(最大の理由は圧倒的なやる気の欠如だけど。無理もない。)そして完成した理由も、climaticがあまりにイライラした末に製作を拒否したからに過ぎない。

<climatic> くっそ
<climatic> ahsdd
<climatic> adsnkljlgf
<climatic> もうしらね

幸いチェス盤そのものはもう十分出来上がっていたので、moekkiが迅速に効果レイヤーを加えて仕上げ、ゲームに挿入できるようになった。ところが! ここに来ていくつか致命的な連絡ミスがあって、climaticに伝わった情報が不十分だったことが発覚した。実はその間に、deltaがカットインが不要になるようにそのシーンへのディレクションをしていたのに、リクエストそのものを取り消していなかったのだ。また、チェス盤の絵が説明に沿っていない(穴が描かれていない)だけでなく、すでにゲーム中に追加されている同じチェス盤の絵と大幅に食い違っていた。つまりclimaticはゲーム中の説明と一致しない、別のチェス盤の絵とも噛み合わない絵を描くのに3ヶ月も費やしたというわけだ。しかもゲームそのものにも入らない。ゲーム中のファイルのディレクションに一言でも口を出す前に、関係する人間に何度でも念を押して確認すること。皆さんにもこの教訓が伝わることを願う。

<climatic> 俺の人生の数時間を無駄にしてくれてありがとうSuriko
<climatic> オーブンに頭突っ込んでくる

心配ご無用! climaticのカットインCGと違和感が出ないように、Moekkiが二つ目のチェス盤の絵を手直しした。(彼女はセーブするのを忘れるタイプなので、2回もやり直す羽目になった)そしてweeeがカットインに穴を描き加えて、deltaが諸々の要素がちゃんと整合するようにシーンのディレクションを調整した。

この血と汗と涙の結末は?




おお! 全ての労力が10倍になって返ってきた。ゲーム中には他にも山ほどカットインCGがある。たとえば久夫が学園祭でゲットして静音に渡した、このかわいらしいぬいぐるみ……(私は茄子猫と呼んでいる)



……またはこの謎の箱!




……ブログに描くようなネタが何もなければ、開発はいつも順調に進むんだろう。

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