2015年4月7日火曜日

翻訳スタッフより(2)

昨日に引き続き、翻訳スタッフからのコメントをご紹介します。プロジェクト後半からの参加でしたが、作業の速さと綿密な翻訳レビューで品質向上に貢献していただいた秋茄子トマトさんです。



秋茄子トマトです。
翻訳者コメントということで、自分なりにこの翻訳プロジェクトを振り返ってみたいと思います。

人生何が起こるかわからないし、明日死ぬ可能性だってあるので、何か(名前とか存在証明とか)を残したいな~という気持ちが最近ちょっと出てきて(昔は全然なかったんだけども)、実は、それがこのプロジェクトに応募した理由の一番大きなものかもしれません(単純に、面白そう楽しそう、などの理由も、もちろんあります!)。
「かたわ少女」は、フリーゲームの歴史に名前を残すゲームだと思うし、ということは、十年や二十年程度は絶対に残る作品だと思うのですよ。
そこに翻訳者として名前が載れば……仮に明日死んでしまったとしても、確かに自分はここにいた、という証をある程度の期間、残せるんじゃないかと思ったのです。
もちろん、これからの時の流れの中で、このゲームも忘れ去られるときがくるだろうけれども……自分はこのときちゃんと生きていたよ、という印を残しておきたかった。
そういう個人的な思いもあって、この翻訳に参加したんですが、ぼくは、確かグループの中では最後に入ったメンバーだったんじゃなかったかな。
多人数で翻訳するのは初めてだったので、いろいろ新鮮でした。

担当箇所や作業手順について。
「図書室」を選択したあとに、章の上にカーソルを当てると下のほうに見える説明……いわゆるサブタイトルの説明、の翻訳。それから、各ルートのレビューと動作チェックをやってましたね。
ぼくが入った時点では、英文から日本語への翻訳がおおむね終わっていたのですが、そのままだと誤訳などもあるので、原語と対応させて何重かのチェックをかけて修正を入れたりするわけです。そこで、原文と照らし合わせて、誤訳や言い回しなどをチェックしていく作業(レビュー)をします。
リリー、華子、笑美ルートが、レビューをたくさんしたところでしょうか。これらのルートはけっこう自分の訳や解釈も入っている印象があります。
動作チェックは、日本語でゲームをプレイして、おかしなところを直していくというもので、日本語として違和感を感じる表現を直していく作業です。たまに原文にも当たることがありました。
レビューと動作チェックにはけっこう貢献できたのではないかと思ってますが……どうだろう。

こういう手順でやってたわけですが、読んでわかるとおり、一人の人間がルート一本まるまる翻訳担当する、っていう形じゃあないんですよね。
多人数でやるんだからダブルチェック、トリプルチェックかけるのは当然といえば当然なわけですが……。
もちろん、ゲームの規模が大きいというのもあると思いますが、そういう風に翻訳をしているとは知らなかったので、「おお~!」と感嘆。
ここまでの規模のゲームだと、翻訳もかなりの共同作業になるんだなあ、と思いました。
自分の前の人の翻訳や、その修正なども見れるので、他の人の作業過程がわかり、非常に面白かったです。
「なるほど、この訳はいいな」とか「自分にはこの表現は出せない」とか「あ、誤訳だ」とか「英文の解釈が違うんじゃないか……?」とか。
そういう色々なことを考えられるのも、楽しかったですね。やっぱり訳者によって「くせ」や「色」があるのも見えて、興味深かったです。
非常に楽しかったし、いい経験にもなったと思います。

印象に残っていることは、レビューのときに見た、"She's limping slightly, favoring the left leg."という笑美ルートの表現ですかね。
「右足をけがしているので、左足で歩いている」という箇所なんですが、訳す時にどういう意味か混乱したので印象に残っています。「favoring the left leg」について、左足をかばっているっていう意味で、けがしたのは左足なんじゃないか、という解釈と、右足を痛めていて左足を優先的に使っているという解釈のどっちが正しいのか、結局、原作側に聞くことに。翻訳された小説などを読むと、原作者とのやり取りについて書かれたものに出会うことがありますが、「これがそうか……!」とちょっと感動。

翻訳しているうちに、キャラにもルートにも愛着がわいてきます。たとえば、英語で読んだときはそれほどでもなかったけれど、日本語で読んで、華子に対する愛着が増えた感じがします。静音ルートは、岩魚子の手紙についての健二のセリフがかっこよく、かなりサブキャラが目立っているルートだと思います。琳はキャラクターがホント好きです。このルートでは久夫の気持ちより琳の気持ちがわかる気がしたくらい。
どのルートもよいのですが、触れ合った時間が長いためか、あえて言うなら、笑美とリリーに、特に愛着があるかも。リリーのレストランでの服装を考えた人には拍手を送りたいし、笑美に似た人を実際に知っています。ストーリーも好みでした。
そして、岩名子ルートとミーシャルートがなかったのはつらい……RAITA氏の原案的にしょうがないけど、とくに岩魚子ルートは欲しかったですね。どんな人だったのか、もっと知りたいキャラです。変則エンド扱いでいいから、復縁ルートが欲しかったなあ。

最後に、プレイヤーの皆さんが、この日本語訳版かたわ少女を楽しんでいただければ、翻訳プロジェクトに少しでも関わったものとしては、大変うれしいです。
原作の4 Leaf Studioの方々にも、翻訳プロジェクトに参加したすべての方にも、そしてプレイヤーの皆さんにも、多大な感謝を。ありがとうございました。

0 件のコメント:

コメントを投稿