翻訳チームのものです。
最近は開発ブログ本家でもあまり更新がないので、Act1の翻訳について、どのようなことに気を付けたか、どういう経緯があったか、等の裏話など書いてみることにします。
今回は翻訳された文章そのものについて書いていますが、翻訳プロセスについてはまた別の機会にご紹介したいと思います。
「この文章の原文はどうだったのか」みたいなご質問がもしあれば、コメント欄までお願いします。
■キャラ同士の呼び方について
英語では親しい他人の名前を呼ぶ際は基本的に下の名前を呼びます。いわゆる敬称が英語には存在しないため、これを機械的に日本語に直すと互いの距離感がめちゃくちゃになってしまいます。そのため、キャラ同士の親しさの度合いはおおむね「君づけ・さんづけ」の有無で表現することになります。
訳すにあたって互いの呼び方が分からないと話にならない、ということで一通り原文を読み込んだ後にキャラ同士の呼び方表を作成。開発陣にレビューしてもらってから微調整しました。
開発側によれば晃さんが関西弁をしゃべるという初期設定があったのですが、翻訳チーム側で手に負えない気がしたので標準語にしました。
(転校生をいきなり「久夫くん」って呼ぶのも考えてみれば変な気がするけど。ふつう「中井くん」じゃないか……まあそこはスルーで。)
で、リリース版での久夫の呼ばれ方を振り返ってみると
- 静音、琳:久夫
- ミーシャ:ひっちゃん
- 笑美、華子:久夫くん
- リリー:久夫さん
原文を読んだうえで、翻訳チーム内で議論しつつ、割と感覚的にこのような呼び方に決めました。
ただし、原文ではいずれの呼び方も"Hisao"であり、ミーシャを除けばキャラごとに違いはありません。くん付けさん付けからさらに親しくなって呼び捨てになる、といった距離感の変化は今のままでは表現できないわけです。やるとしたら、それは翻訳者による勝手な解釈になるので、私個人は否定的です。果たしてそのような展開が完全版ではあるだろうか、それはやってもいいことなのだろうか、と心配しています。気の早い話ですが。自分は個人的には逸脱だと思うのですが、難しいところです。
華子ルートではそういう展開がもしかしたらあるんじゃないか、と勝手に予想していますが、さてどうなりますかね。
何分Act1の内容だけで訳しているので、ルート完了までのことまで見通した訳出ができない、というのが困難なところです。
■各キャラについて
久夫
一人称(僕俺私)を決めるところでいきなりみんなで悩みましたが、「結構ぶっきらぼうな感じだし、俺にしないか」ということで落ち着きました。年頃の高校生男子の、ちょっとだけいきがってる感じを出したいと思いました。
高校生の割には、地の文でかなり複雑な心理描写が多いのが苦労したところでした。
静音
静音自身の言葉が直接画面に出ることはほとんどありません。なので訳出においては無難な形にとどめていますが、いくつかポイントを述べるとこうです。
- 静音ルート木曜日の「……わたしたちの期待を裏切ったのよ、久夫」>ミーシャが「久夫」と呼び捨てするのはこのときだけ。違和感を覚えたので開発陣に聞いたら、「ここはミーシャを『通じて』静音が直接話している」という回答だった。
- 手書きのメモ>妙な勝負ばかり仕掛けてくるキャラなので、ちょっとお茶目っぽく勝ち誇る感じを出してみたつもり
ミーシャ
筆者は静音とミーシャを最初に担当したので、訳についても自分の好みが結構入っています。なんとなく第一印象で「だよだよ星人」にしてしまいました。何かとフリーダムなミーシャの話し方は訳していて楽しかったです。脳内キャスティングではある声優の声が当たっているのだけど、それは余談。
ミーシャのセリフと、通訳された静音のセリフの見分け方。事前に静音の「……」がある場合、直後のミーシャのセリフは通訳されたものである可能性が高いです。また、通訳されたセリフの口調はミーシャの通常の話し方とは意図的に変えてあります。それでも時折分からない部分があって、万策尽きたときは開発陣に問い合わせるなどしていました。
フォーラムで「ミーシャのセリフの『~』はどういう意味なの?」というスレ(http://ks.renai.us/viewtopic.php?f=13&t=3314)が立っていて、確かに英語しか知らないとわからないよな、と思いました。(長音記号があって、それを波打たせることで抑揚があることを表現する、という)
華子
担当の方がいい感じに引っ込み思案な女の子の雰囲気を再現してくれました。どもりの表現などは基本的に原文に合わせています。比較的悩まずにすんだキャラでした。
最初はですます調だけど、だんだん自分を出していって自然な話し方をするようになるんじゃないか、と思っています。
リリー
お嬢様的な雰囲気は当初から明らかでしたが、どういう案配で出していくかは当初試行錯誤がありました。
昔の華族みたいなしゃべり方か、ステレオタイプ的良家のお嬢様か、といろいろ主張が錯綜する中、口調よりも物腰の丁寧さで表現するような形に落ち着きました。マリみての雰囲気が近いと思います。
晃さんと話すときには砕けた話し方になるのがちょっとしたひねりになっています。
琳
琳は間違いなく、全キャラ中最強の難物でした。(2位は健二。)脈絡なく繰り出される奇抜なセリフの数々には大変悩まされたし、英語でないと通じない言葉遊びや、非常に意味の取りづらいセリフが多数ありました。チーム総出で相当がんばったけど、見る人が見れば、結構苦しい訳をしている部分が分かるのではないかと思います。
キャラの性格に合わせて、しゃべり方も浮世離れというか飄々とした口調での訳出になりました。個人的にはブギーポップのイメージが重なっています。(ごく初期にボクっ娘じゃないかという話も翻訳チーム内にあったのですが、やめておきました。)
笑美
こちらはあまりひねったセリフは多くなく、シンプルな文章だったので訳出は楽な方だったと思います。押しの強くて元気な子はいいですね。
健二
琳ほどではないけど、こちらも相当へんてこで長回しなセリフが多く、自然な訳出をするのにとても苦労しました。パラノイアの思考について行くのは大変です。
晃さん
黒のパンツスーツを着ているところからもわかるように、原文でも男性的な雰囲気を強く出しているキャラなので、口調も中性的にしてみました。関西弁にはしなくて良かったと思っています。
ナース
彼は英語でもNurseというキャラ名になっており、開発チームより「呼称の際はかならず『ナース』と表記し、翻訳はしないこと」と指定がされています。笑美はナースくんと呼びますが、これも開発側指定によります。
これがのちの伏線となるのかどうか、興味深いところです。
その他サブキャラ(優子さん、先生方)は特筆するほどのエピソードはないため割愛します。
今後も新キャラが出てくると思われるので、翻訳者としては楽しみにしています。
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