2010年7月28日水曜日
Babycastles インディーゲームアーケードでKS展示
来月ニューヨーク市でインディーゲーム専門ゲーセンのBabycastlesがHardcore Feelingsというショーを開催する。ビデオゲームジャーナリストMatt "Fort90" Hawkinsが選出したプレイアブルなインディーゲームタイトルを取り上げるという内容だ。何がすごいって、かたわ少女 Act 1が展示タイトルに選ばれたって事だ。近所に住んでいるなら、ぜひ見に行って欲しい。
8月5日に開催されるオープニングナイトのパーティでは、チップチューンアーティストのGLOMAGと、3DパズルゲームSuper Hypercubeがフィーチャーされる。ただし来るのが遅い人たちのために、Super HyperCube以外のゲームは8月いっぱい展示される。
展示タイトル:
SUPER HYPERCUBE
Kokoromi and Polytron
CALVIN & HELLEN'S BOGUS JOURNEY
Hellen Jo / Calvin Wong / Derek Yu
Untitled
Deth P Sun / Cactus
RESCUE THE BEAGLES
16 x 16
KATAWA SHOUJO
Four Leaf Studios
LOVE LOVE 2
TYO / Seitron & Art Inc
場所:
Silent Barn
915 Wyckoff Avenue
Queens, NY
2010年7月15日木曜日
Four Leaf Studiosのしくみ
いったいKSはどうやって作られているのか? 日々の開発はどんな感じなのか? 前にもこういうことについて書いてみようとしたことがあるけど、正直言って、このチームが動くしくみをわかりやすく説明するのはとても難しい。私たちは極めて有機的で、ダイナミックで、はっきりした形を持たないグループだ。同時に、自分たちが活気がなくて、でたらめで、脳天気すぎると感じることも多々ある。ちょっと矛盾しているけど。このチームの根源的な部分として私たち自身が受け入れるに至った、その複雑さや突飛さを隅々まで語ることは私にはできない。(もちろん、やってみるつもりなんてまったくない。)それでも読者諸兄のために、いくつか語ってみようと思う。私自身もチーム全体への理解を深めることができるかも知れない。それじゃ行ってみよう。
私たちの作業の中で、二つの主たる課題がある。プロジェクト自体の膨大な規模と、それに関わるたくさんの人々をまとめていくことだ。こんなデカい仕事をこなす能力なんてあるわけがない、とこのチームの誰もがためらうことなく認めると思う。それでも、どうにか作業をこなしている。言うほど簡単じゃないってだけのことだ。私たちの作業の進め方には、厳密な上下関係のないものがほとんどだ。(そういうやり方をするために必要な開発者がいないだけかも知れないけど。)全員がとても明確に定義された作業を受け持っていて、各自がほぼ一人で取り組んで完成させる。もう少し広い範囲の責任を負うケツ叩き役が何人かいて、怠けている奴にもっと働けと定期的に催促する。でも厳しい締め切りをもうけるのは、こういうプロジェクトでは明らかに無理がある。具体的なやる気の種がなければ、目標を追いかけ続けるのはとても辛い。義務感、仲間意識、情熱等々は良いものだし、私たちにやる気を与えてくれる。でも開発地獄という海のど真ん中にあって、はるか彼方にある陸地が遠すぎると感じるときもある。とにかく、みんなそれぞれに仕事があって、それぞれのペースで完成に向けて作業をしているわけだ。
理屈の上ではこのとおりだ。実際には、KSのことや、自分たちのアイディアや手法について議論したり、ゲームのいろんな部分に対するフィードバックを出したり受け取ったりすることに大量の時間を費やしている。
アイディアや持論についての議論は一番オープンだ。たいていの場合、予想もしなかった洞察や新しいアプローチにつながって、ゲームの出来がよりよいものになる。一番ストレスと無縁なタイプの議論でもある。しかもたいてい、結構楽しい。この段階では、他の何にもまして実用性と実現可能性をとても重視する。完成したゲームがどのような形になるか、私たちには非常にはっきりしたビジョンが見えている。作業の途中経過について話すことは時折、任意に行われる。普通、誰かがどう進めていいかわからないとき、あるいは二人以上の人間の間で意見の不一致があったときに、こうした議論が始まる。関心のあるメンバーが相互に討論を行い、合意に至るか、一番利害の大きい者、あるいは一番意見に説得力がある者が他のメンバーを押しのける。(ほとんど起きないけど、)完全な行き詰まり状況を打開する手段は、他にもいくつかある。イラストは未完成であっても非常に把握しやすいので、他の分野に比べると作業中の段階での議論がとても多い。素材(asset)(ゲーム中の要素のこと。シナリオの一片、完成したイラスト、BGMトラック、スクリプトの入ったシーン等)が完成したら、興味のあるメンバー全員がコメントをつける。時には無理矢理にでも意見を出させないといけないこともある。発言の少ない開発者の場合は特に。このフィードバックは賞賛から承認、重箱の隅つつきから、全面的かつ暴力的な批判の嵐(最悪の場合は同時に複数から)まで多岐にわたる。さらに手直しが行われ、関係者全員が満足したら、完成したと認められる。(ただ実際には何も認められたわけではない。誰ももう反対していない、少なくとも文句を付けるほどではない、というだけでしかない。)ゲームに採用される素材が、一人だけの手で完成することはほぼありえない。どんなものも、いずれは他のメンバーが手を付ける。絵描きたちが相互に絵に色を塗ったり手を加えたり、編集者が全部のスクリプトを編集したり、ライターがお互いに手助けし合ったり。それからディレクションはあらゆる要素に影響を与える。等々。大事なことは、みんなが満足するものなんて存在しないということだ。何が誰の基準に従っていなきゃいけないか、という非常に複雑なパターンがここには存在している。でも私たちはみんな、KSのようなものに関わるならギブアンドテークが大切だという教訓を学んでいる。全てが自分の思い通りになっていなきゃいけないわけじゃない、ということを認めていい場合もある。こうやって欲しいと思っていることが、現実的には不可能だということを時には受け入れなくてはいけない。基本的に、全てのメンバーは等しく創作的な自由がある。開発の議論を通じて、私たちはこの創造力を一つの方向にまとめようとしている。私たちはKSの最終的な見た目が、15人の明らかに個別のメンバーが、一つの統一された発想にもとづいて作ったかのようになればいいと思っている。
で、どうやってこれだけのことをやってのけるのか? 5つの基本的な開発「ツール」がある。基本的に、ゲームデータや情報、コミュニケーション管理の手段でしかない。フォーラム、IRC、MSN、SVNとTracだ。
どちらかといえば……自由形な公開IRCチャンネルと違って、開発IRCチャンネルは開発以外の話は御法度だ。KSと直接関係のない議論が起こることも時にはある。たとえば一般的なVN開発についての話はしょっちゅうする。メタな議論もたくさんある。しかし行き当たりばったりの雑談や脱線は許容されない。このことから、誰かが議論したい話題を持ち出さない限り、チャンネルは完全にしんでいると言うことだ。議題が上がったら、参加できるメンバーは活性化して意見を出す。IRCは間違いなく、このプロジェクトで使われている中でもっとも厳しく、率直で、直截で、もっとも便利なツールだ。この文章を書いている瞬間にも、かれこれ50分ほど続いているリリールートのあるHCGにおける久夫のペニスについての議論をだらだらと追いかけ、たまに書き込みをしている。
重要な問題、特にちゃんとした記録を取っておく必要があるものは、フォーラムで処理する。メンバーは様々なタイムゾーンに散在していることと、IRCで手当たり次第に流れる会話にくらべてフォーラムの投稿はきちんと簡潔に書かないといけないということから、実際のフォーラム上の議論は実に体裁が悪い。永続性が必要なときにフォーラムを、活発な議論をするときはIRCを使う、と言えるだろう。一対一の会話の多くはMSNでのインスタントメッセージング上で行われる。私たちの多くは単にダベり続けることも好きなので、これにはたいていは関係のない話題についてのおしゃべりが含まれる。他に比べてずっと消極的な開発者もいる。特定の話題についての話しかしない者もいる。みんなそれぞれに独特の性格を持っている。時が経つにつれ、各々が他のメンバーとどのように接するのがベストか、大なり小なり学んでいった。しかしいかなる意味でも、自分たちが完璧にそれを身につけているという言うことはできない。性格の衝突、誤解や軋轢はしばしば起きる。一部のメンバーは別のあるメンバーとほとんど話をしない。要するに、私たちが形作るネットワークは全員が全員とつながっているような完璧なものじゃない。むしろ、全員が自分の関わっているべき、そして関わっていたいメンバーとつながっているんだ。(誰か4LSのメンバー相関図を作るべきかもなwww)これは有機的成長、進化と適応の事例でもある。みんなそれぞれにチームの中で居場所を見つけ出している。
SVNはバージョン管理システムで、これのおかげで15人以上の4LSメンバーが一つのプロジェクトで同時に作業をすることができる。つまり、これはKSのマスターバージョン(それとリビジョンと呼ばれる、過去の全てのバージョン)を格納していて、新しい作業が完成したときに全てのメンバーが最新のデータを持っていることを確実にする。平均して毎月60から80のリビジョンが作られる。つまり、KSプロジェクトでは新しい素材や改善・修正の追加が一日に二、三回あるということだ。もちろんこれは均等に起きるわけじゃない。一週間くらい何も起きないこともある。一方、たとえばAct1リリースの前の週には一日に15から20のリビジョンがあった。
Tracは一番使用頻度の低いツールだけど、リリースの前には非常に使える。これは作業、バグ、課題や問題の経過を追いかけるツールで、言ってみれば巨大なTo-Doリストだ。私たちが気になっていて、KSが完成してリリースできるようになるまでに直さないといけないことをこれに全て記録している。これにはWikiもあるけど、ドキュメンテーションについてのKSプロジェクトの特徴のためにほとんど使っていない。(まったくもって最悪な特性なので、自分のプロジェクトでは絶対真似しないように)設定とか、キャラとか、作業手順とか、とてもとても多岐にわたるあらゆる情報が、きれいなドキュメントファイルのような形ではどこにも書き残されていないのだった。代わりに、そうした知識はもう何年もの間築き上げられた知識の巣のように、全てメンバーの間で共有されている。たとえば、公式な経歴がきちんと作られているキャラクターは一人もいない。でもその情報に関係のあるメンバーは、その頭のどこかにそれを記憶しているのだ。
自分が今書いたものを読み返してみて、ため息をついた。またしても、表面的なこと、全ての出来事の機械的な仕組みばかり書いて、この集団の本質を捕らえることがまるっきりできていないような気がする。それが当然なのかも知れない。現実には一日一日は異なっていて、毎週新しいことが起きて、毎月何かしら破滅的かつ見事な大失敗に見舞われる。でも私たちは自分たちなりのやり方でこの流れに身を任せている。一致団結して、ともに作業し、笑いあい、ふざけあい、怒りあいながら。なぜなら私たちは他のやり方を知らないのだから。
-Aura
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